実際の食事介助を行うとき、大スプーンと小スプーンで、どれくらい介助を受ける人(患者さんや利用者さん)の食べ方が変わるのか、食事介助風景の写真をもとに解説したいと思います。
1、間違った「スプーン×姿勢」が誤嚥リスクを招いてしまう!
写真①のように、大スプーンと小スプーンでは、掬えるひとさじの量が大きく違います。
大スプーンの場合は、山盛りになってしまうため、摂食嚥下障害者は1回で嚥下できず、誤嚥リスクを招いてしまいます。
また、飲み込むときの姿勢にも注意が必要です。私たちがふだん自力摂取しているときは、やや頸部前屈の姿勢
(顎と胸骨の間に握りこぶしが1個が目安)で食べています。
しかし、図1のイラストのように顎が上がった姿勢では、飲み込みづらさやムセを生じやすく、誤嚥リスクを招いてしまいます。
2、大スプーンでの食事介助は、無意識のうちに危険を招いてしまう!
健常であれば、スプーンのサイズが大きくても食事介助の方法に個人差があっても、自分の嚥下力でカバーできます。
しかし、ご自分で自力摂取できない方にとっては、食べにくい食事介助をされることは苦痛です。
そして、介助者の無意識の行為(写真②-B)が、ムセや誤嚥リスクを高めることになってしまいます。
写真②)スプーンの大きさの違いが、介助と捕食に与える影響
小スプーンは、ホールが全て口中に入るため、上唇でしっかり捕食できる。
患者の目線も最期まで下方を向いているため、顎が上がっていない。⇒良い嚥下につながる
大スプーンは、ホールが口に入りきらないため、無意識に介助者は口中へ流し込もうとし、
患者は食べ物をすすろうとしてしまう。
その結果、顎が上がり頸部は伸びてしまう。⇒ムセ、誤嚥を招く!
食べるという行為は、私たちの日常では当たり前のことで、無自覚のうちに繰り返されている行為です。
この無自覚に行えていることを意識化するということが、案外難しかったりします。
そして、相手を思う気持ちと根拠を併せ持った対応こそが、安全で食べやすい食事介助を生み出すのです。
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