|コラム|クロムの働きとエビデンス

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」において、クロムについて、

18歳以上は耐容上限量が1日500㎍と新たに設定されました。(※目安量は10㎍/日)

クロム?とあまり献立上馴染みがない栄養素かもしれませんが、栄養相談をする上で知っておくとよい内容です。

論理的に会話ができる栄養士を目指しましょう !

 

 

1.クロムとは?


クロムは5大栄養素の「ミネラル」に分類され、クロムには主に三価クロムと六価クロムがあります(1)。

食品に含まれている中でほとんどは三価クロムであり、レバーや穴子、あさり、蛤、ひじき、プロセスチーズなど幅広い食品に含まれています。

 

 

2.クロムの主な働きについて


クロムは正確な構造はまだまだ解明されていないこともありますが、最近の研究では、低分子量クロム結合物質がインスリン受容体のインスリンに対する反応を促進している可能性があると報告されています。

つまり、インスリンによって刺激されるブドウ糖輸送体の細胞膜への移動を促進することで、クロムがインスリンの作用を強めていることが示されています(2)。

クロムが不足すると、動脈硬化、糖尿病、高血圧、脂質異常症、末梢神経障害などを発症し、過剰摂取では、腎障害、肝障害の原因となるという報告があります。

食品中のクロムは吸収率が低いため、通常の食品から過剰症の心配はほとんどない一方、ピコリン酸クロムのサプリメントの長期間使用に関する安全性については懸念が示されています。

 

3.クロムの食事や健康に関するエビデンス


・2型糖尿病患者に対するピコリン酸クロムの補充はインスリン感受性および血糖コントロールを有意に改善する(3)。

・毎日最大1,000μgのクロムを数ヶ月服用しても安全であったことが示されている(4)。

・ピコリン酸クロムとしてクロムを6週間にわたって600μg/日摂取した5ヶ月後に、腎不全が報告された(5)。

・ピコリン酸クロムとしてクロムを4~5ヶ月間1,200μg~2,400μg/日使用した後に、腎不全と肝機能障害が報告された(6)。

 

 

 

 

 

(参考資料)

  1. Food and Nutrition Board, Institute of Medicine. Chromium. Dietary reference intakes for vitamin A, vitamin K, boron, chromium, copper, iodine, iron, manganese, molybdenum, nickel, silicon, vanadium, and zinc. Washington, D.C.: National Academy Press; 2001:197-223.
  2. Chen G, Liu P, Pattar GR, et al. Chromium activates glucose transporter 4 trafficking and enhances insulin-stimulated glucose transport in 3T3-L1 adipocytes via a cholesterol-dependent mechanism. Mol Endocrinol. 2006;20(4):857-870.
  3. Martin J, Wang ZQ/Zhang XH/Wachtel D, et.al. Chromium picolinate supplementation attenuates body weight gain and increases insulin sensitivity in subjects with type 2 diabetes. Diabetes Care/. 2006, 29(8): 1826-32
  4. Hathcock JN. Vitamins and minerals: efficacy and safety. Am J Clin Nutr. 1997;66(2):427-437.
  5. Wasser WG, Feldman NS, D’Agati VD. Chronic renal failure after ingestion of over-the-counter chromium picolinate. Ann Intern Med. 1997;126(5):410.
  6. Cerulli J, Grabe DW, Gauthier I, Malone M, McGoldrick MD. Chromium picolinate toxicity. Ann Pharmacother. 1998;32(4):428-431.

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プロフィール

一般社団法人健康長寿科学栄養研究所代表理事
管理栄養士 麻植有希子先生

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